各試薬の違い
測定法
IP
検体中の無機リン(IP)はプリンヌクレオシドホスホリラーゼ(PNP)の作用によりキサントシンと反応し、キサンチンとリボース1-リン酸を生じます。生成したキサンチンはキサンチンオキシダーゼ(XOD)の作用により尿酸と過酸化水素(H2O2)となり、
さらに過酸化水素はペルオキシダーゼ(POD)によって4-アミノアンチピリン(4-AA)とN-(2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル)-3,5-ジメトキシアニリン(HDAOS)を酸化縮合し、キノン色素を形成します。
このキノン色素を比色測定することにより、無機リン濃度を求めます。
なお、内因性のキサンチンはXOD、カタラーゼの作用により第一試液(R-Ⅰ)中で消去されます。
測定意義
体液中のIPはPTH(パラソルモン;副甲状腺ホルモン)の制御を受けて恒常性を保っています。尿中へのIP排泄には血中IP閾値があり、血清IPが3.2mg/dL以下ではほとんど尿細管から再吸収され、これ以上になると尿中に排泄されるようになります。
PTHは尿中へのIP排泄を促進し、血中IP濃度を低下させ、骨からのCa動員による血中Ca上昇に対して、[Ca]×[IP]の溶解度積を一定にしています。CaとIPの両者の測定は副甲状腺機能、骨疾患、腎疾患などの診断に主に利用され、
疾患時には密接に関連して変動することが多いとされています。血中IP濃度は、腸管からの吸収、骨からの動員、体内利用とリン酸化合物の異化、細胞内外の移行、腎からの排泄などに関係して変動がみられますが、同時にCaやALPの変動と関連して考察することによって診療上有用な所見が得られます。
血清IP低値) | 解糖亢進による血中IPの細胞内移行、原発性副甲状腺機能亢進症、尿細管再吸収障害 など |
血清IP高値) | 腎不全、副甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、成長ホルモン分泌過多 など |
尿中IP低値) | 摂取不足、嘔吐、下痢、副甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症 など |
尿中IP高値) | 摂取過多、ファンコニー症候群、副甲状腺機能亢進症、高血糖、利尿薬 など |
血清 | 2.2~4.1mg/dL |
尿 | 0.5~1.0g/day |
金井 他,臨床検査法提要,改訂32版,p.203,p.578,2005. |