各試薬の違い
測定法
HK法(ヘキソキナーゼ-UV法) GLU-HL、GLU-L、GLU-HL TypeH
検体中のグルコースにアデノシン-5′-三リン酸(ATP)と塩化マグネシウムの存在下でヘキソキナーゼ(HK)を作用させると、アデノシン-5′-二リン酸(ADP)とグルコース-6-リン酸(G-6-P)が生じます。このG-6-Pはβ-ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチドリン酸酸化型(β-NADP)の存在下でグルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6P-DH)の作用により酸化されて6-ホスホグルコン酸(6-PG)となります。
このとき、β-NADPは還元されてβ-ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチドリン酸還元型(β-NADPH)となりますので、このβ-NADPHの生成に伴う吸光度の増加量を測定することによりグルコース濃度を求めます。
GDH法(ブドウ糖脱水素酵素法)UGLU-L
検体中のグルコースにβ-ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド酸化型(β-NAD+)の存在下でグルコース脱水素酵素(GDH)を作用させるとD-グルコノ-δ-ラクトンを生成します。
このとき、β-NAD+が還元されてβ-ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド還元型(β-NADH)となりますので、このβ-NADHの生成に伴う吸光度の増加速度を測定することによりグルコース(GLU)濃度を求めます。
測定意義
糖質は、生体のエネルギー源およびその貯蔵物質として、あるいはヌクレオチド、核酸、糖蛋白、糖脂質などの構成分として生体の構成や機能に重要な役割を果たしています。生体内の種々の糖質のうち、健常人血液中に最も多く存在し重要な働きをしているのは、ブドウ糖(グルコース)です。血糖、尿糖にはグルコース以外の他の糖も含まれますが、臨床検査では、血糖、尿糖はグルコース濃度として測定されます。
血液中の血糖検査は糖尿病、境界型耐糖能、低血糖の診断に必須です。糖尿病のコントロール状態の評価に頻用されます。糖代謝異常が疑われた時(尿糖陽性、口渇多飲、低血糖症状など)や、糖尿病のリスクが高い例(内脂肪型肥満、糖尿病の家族歴、高血圧、高トリグリセライド血症の存在など)で検査を行います。
また、健常人の尿中にはブドウ糖が微量に存在し、その濃度は2~20mg/dL、1日排泄量は40~85mg程度です。通常の定性(試験紙)検査では証明できませんが、UGLU-L試薬を用いた定量検査で測定することができます。糖尿は種々の原因による糖質代謝異常によって血糖値が上昇した場合、または、血糖値の上昇が無くても腎臓の糖排出閾値が低下した場合(健常人の糖排出閾値は血糖160~180mg/dL)に出現します。
血中GLU低値) | 空腹時低血糖、反応性低血糖(食後低血糖)、誘発性低血糖(薬物投与など) 等 |
血中GLU高値) | 糖尿病、薬剤性高血糖、ストレスに伴う高血糖 等 |
尿GLU高値) | 食餌性糖尿、特発性一過性糖尿、持続性糖尿 等< |
血清・血漿 | 73~109mg/dL |
尿 | 1日40~85mg |
臨床検査法提要改訂 第34版 p490,p139 |